介護分野における外国人活用の現状と課題

2019年4月に特定技能の介護分野が新設されました。
介護事業者の方にとって、特定技能制度で外国人を雇用するにあたり、どのような課題・ハードルがあるでしょうか?

特定技能制度がスタートし1年経過しましたが、コロナの影響もあり、既に外国人材を受け入れている事業者よりも、これから受入れのために動くという事業者が圧倒的に多い状況です。

そのような状況下ではありますが、様々な介護事業者の方々にお話しを伺う中で、やはり一番の課題・ハードルと感じていらっしゃるのは「外国人材の日本語力」です。

その次の課題としては、「外国人材本人の性格」です。
こちらに関しては、それぞれの国の国民性という話ではありません。日本人でも、海外の人でも、介護という職に関わる上で性格が合う・合わない部分は実際あると思います。

3点目は、外国人材を受入れるという事に対し、「入居者さんや利用者さんが拒否反応を示されないか心配」という点。

最後に、「介護事業者の経営者・日本人スタッフが外国人材とどう接し、どのように対応したら良いか分からない」という点であります。

   

現在、介護事業者の方々が抱えていらっしゃる課題についてお聞かせください。

まずは「離職率」だと思います。ほかの職種に比べても離職率は高い数値となっています。『平成29年度 「介護労働実態調査」の結果』によると、職種合計(訪問介護員、介護職員)の 1 年間(平成 28 年 10 月 1 日から平成 29 年 9 月 30 日まで)の離職率は 16.2%との事です。
参考:http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h29_chousa_kekka.pdf

また、この離職率という課題はいくつかに細分化できます。
ひとつは「給与水準が低い」点です。
求人ボックスによると、介護福祉士の正社員の平均年収は306万円とのことです。(2020年6月28日時点)国税庁の調査によると「平均給与を企業規模別にみると、資本金2,000万円未満の株式会社においては425万円」とのことであり、介護職の平均年収との乖離があることが分かります。

2つ目は「不規則でハードな職場環境」です。
24時間を早番・日勤・遅番・夜勤と4交代制に分け、24時間稼働している介護事業所がほとんどだと思われます。夜勤が多くなってくると、他の業種と比べて生活リズムが乱れることも多く、体力的に苦しいと言われる方が多いです。

   

離職率が高いという課題に関わる部分だと思いますが、日本の少子高齢化の影響もあり、2025年には35万人の介護職員の人手不足が予想されています。
実際に現場では人手不足によりどのような影響が出ているのでしょうか?

4~5年前の話ですが、私が入っていたコンサル先の施設のすぐ近くに100床の特別養護老人ホームができました。普通なら入居費用が安く、入居まで何年も待ったり、何百人待ちといった事が多い中、1年経っても半分しか埋まりませんでした。

その理由は、「働くスタッフが集まらないから」ということでした。他でも同じような話を聞くことがあります。

   

人手不足の影響で従業員が集まらず、結果ベッドが余ってしまっている施設があるという事ですね。
それだけ稼働率が低いと、会社としても大きな機会損失だと思いますが、採用が追いついていないのでしょうか?

採用が追いつかないというか、応募者がいない状態です。
もはや、外国人材に頼らなければ回していけない施設が増えてきているのです。

まずは日本に定住・永住している外国人材に声をかけましたが、こちらにも限界がありますので、技能実習や特定技能が頼みの綱という段階になっています。

大手の医療法人や社会福祉法人において、人手不足はそこまでひどい状況ではないと思います。ただ、中小規模、そして地方の施設においては深刻な問題だと感じています。

そもそも地方は都心に比べて人が少ないため、求人出しても応募が来ない状況です。

ある施設で、30~40万円ほど求人広告出したことがありました。しかし、電話の一本もなかったんです。そのような状況が現実です。国内でそれだけ費用をかけても一人も採用できないとなると、外国人材に目を向けるのも頷けます。

   

ここまで介護事業者様の現状を伺いましたが、人不足を解決するために様々な「EPA」「在留資格『介護』」「技能実習」などが以前から設けられていたと思います。
それぞれの制度の現状や、どのように機能しているかなどをお聞かせください。

引用:厚生労働省「介護分野における外国人人材に関する諸制度や動向について~技能実習制度など~

まずEPA(経済連携協定 Economic Partnership Agreement)ですが、合格率が低いことが課題です。2008年にインドネシア、2009年にフィリピンからの受入れがスタートし、2014年からベトナムからの受入れが始まりました。

EPAでの外国人介護福祉候補者の受入れは2017年時点で約3,500名程度です。

引用:厚生労働省「介護分野における外国人人材に関する諸制度や動向について~技能実習制度など~

インドネシア・フィリピンからの受験者の合格率は、40%程度と低いことが課題になっています。その一方で、ベトナムからの受験者では90%以上の合格率となっています。

この合格率の差を生み出しているのは、やはり「日本語力」です。

N4とN3の差が大きいと感じています。合格している受験者は、自国でN3レベルまで仕上げて日本にくることが多いです。

   

在留資格「介護」についてはいかがでしょうか?

在留資格「介護」は2017年よりスタートした制度です。外国人留学生として、介護福祉士養成施設で学び、介護福祉士資格を取得した後、在留資格「介護」により介護福祉士として日本で働いてもらうための制度です。

令和元年末時点で、受入れ人数は592名です。

日本語で介護について学べる大学や専門学校を卒業し、日本語で国家資格である介護福祉士の資格を取得することは、外国人材にとって非常に難易度が高いです。

そのため、日本語学校と専門学校を組み合わせて外国人材を採用しようという試みが近年見られています。

   

2017年にスタートした技能実習「介護」についてはいかがでしょうか?

技能実習制度ですので、制度の趣旨に沿って「人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力の推進を図ることを目的」としています。ただ実際は、他の実習と同じように、労働が主目的になってしまっている部分もあり、国際貢献の目的が満たされていないと感じています。

平成30年度で1,823人の受入れを行っています。

技能実習1号・2号・3号と更新でき、合計5年間の在留が認められています。5年後の更新はできませんが、特定技能制度への移行は可能です。

技能実習制度では、転職が不可である点は外国人材にとってデメリットかも知れません。

参考:シルバスクール社作成「介護分野における在留資格まとめ」

   

多くの制度がありますが、まだまだ介護現場における外国人の雇用は期待ほど進んでいないという状況でしょうか。

そうですね。新設された特定技能についてもコロナの影響で試験などができないため、まずは技能実習で入ってこようと考える外国人材も増えてきているようです。技能実習で3年~5年働き、その後に特定技能に移行し、5年間働くという流れです。特定技能に移行するというパターンですね。

そのパターンであれば日本で計8年~10年就労できるため、外国人材にとっても魅力的だと思います。

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