「第10回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」の内容まとめ
令和7年11月14日、法務省において「第10回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」が開催されました。本会議では、前回(第9回)会議での指摘事項に対するフォローアップと、分野別運用方針の作成に関する具体的な検討が行われました。
とくに注目されたのは、漁業分野における監理支援機関の許可基準、転籍制限期間の設定、バス・タクシー運転者の日本語能力要件など、各分野の特性に応じた運用方針の詳細です。
本記事では、配付資料の内容を基に、会議で議論された主要なテーマを詳しく解説します。
「第10回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」で検討された内容
「第10回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」では、第9回での指摘事項を踏まえ、以下の点について具体的な検討が進められました。
| 検討された内容 | 詳細 |
| 漁業分野における監理支援機関の許可基準 | 標準的な基準(8者・40人)に対し、漁業分野では16者・32人とする特例を検討 |
| 転籍制限期間の設定 | 基本方針として「1年を目指す」ことが明確化され、人材育成上の必要性と人材確保の必要性を考慮した判断基準を検討 |
| バス・タクシー運転者の日本語能力要件 | 乗客とのコミュニケーションや安全運転のための情報理解など、業務に必要な日本語能力要件を検討 |
上記についての検討をおこなうことで、外国人材の就労制度のさらなる発展につなげることが求められています。
漁業分野における監理支援機関の許可基準設定
漁業分野では、他の分野とは異なる特有の事情があるため、監理支援機関の許可基準について特例が設定されることが検討されました。
監理支援機関とは、外国人材を受け入れる企業を支援・監理する機関のことです。この監理支援機関には、「常勤役職員1人あたり、どれだけの受入機関を管理できるか」という基準が設けられています。
変更前と変更後の基準は以下の通りです。
| 基準 | 変更前(標準的な基準) | 変更後(漁業分野の特例) |
| 受入機関数 | 8者 | 16者 |
| 受入人数 | 40人 | 32人 |
| 1機関あたりの受入人数 | 5人 | 2人 |
漁業分野では零細な経営体が多いことが特徴で、受入外国人材が2人以下の漁業経営体が約半分を占めています。
また、漁業は海上での作業となる特性上、安全確保のために配乗する外国人材は全乗組員の半分以下に制限されています。
これらの理由から、零細な経営体が受け入れ可能な外国人材は、多くても2人程度と想定されています。
したがって、標準的な基準のように1機関あたり5人を受け入れることを前提とすると、漁業分野では現実的ではありません。そのため、漁業分野では1機関あたり2人の特例が設けられたのです。
むしろ、1機関あたり2人と設定することで、受入機関数は増加します。監理支援機関がより多くの零細な経営体を支援できるうえに、経営体の実情に合った運用が可能となります。
転籍制限期間の設定
転籍制限期間とは、外国人材が現在の受入機関から別の受入機関に転籍(転職)することを制限する期間のことです。育成就労制度では、この転籍制限期間の設定が重要な検討事項となっています。
育成就労制度とは、人手不足が深刻な分野で外国人材を「育成」し、長期的な「人材確保」をおこなうための新しい制度です。技能実習制度に代わる制度として、2027年4月からスタートします。
育成就労制度は、3年間で特定技能1号レベルの人材を育てていくことが方針として定められています。これまで転籍制限期間については明確な方針が定まっていませんでしたが、有識者会議では、「転籍制限期間は1年を目指す」方針が示されました。
ただ、しばらくは以下の3つの観点を踏まえて、転籍制限期間を総合的に判断することが周知されています。
| 転籍の考慮要素 | 詳細 |
| ①人材育成上の必要性 | 転籍による人材育成上の懸念(就労環境の変化により技能習得が遅れるなど)を考慮
※1年以上の期間が必要な具体例 ・一人で安全に作業をおこなう水準の技能を修得するために、同一の設備や機器などを扱う同一の受入企業の環境下で1年以上継続した育成をおこなう必要がある ・1年を超える施工期間を通じて必要な技能を習得することが望ましい |
| ②人材確保の必要性 | 本人意向の転籍による人材流出の懸念や、地域からの人材流出に伴う育成就労実施者の負担を考慮
※1年以上の期間が必要な具体例 地方部から都市部への過度な人材流出が懸念され、急激な変化を緩和する必要がある |
| ③その他 | 育成就労制度を適切に実施する上で必要な観点を考慮 |
転籍制限期間を1年とすることで、受入機関は一定期間にわたって人材を確保できるようになります。これにより人材育成に必要な期間を確保しつつ、人材流出による負担を軽減することが可能です。
一方で、外国人材側から見ると、転籍の自由が制限されることになります。しかし、育成就労制度の目的である人材育成と人材確保のバランスを考慮すると、適切な転籍制限期間の設定は必要な措置と考えられます。
バス・タクシー運転者の日本語能力要件設定
バス・タクシー運転者は、乗客とのコミュニケーションや安全運転のための情報理解など、高い日本語能力が求められる職種です。そのため特定技能人材においても、適切な日本語能力要件を設定する必要があります。
具体的には、以下のような業務によって日本語能力が求められます。
| 業務内容 | 詳細 |
| 乗客との円滑なコミュニケーション | ・行き先確認、料金説明、道案内など、乗客との直接的なコミュニケーションが必要
・観光地を訪れる外国人観光客への対応も求められる |
| 安全運転のための情報理解 | ・交通情報、道路標識、緊急時の対応など、安全運転に必要な情報を理解する必要がある
・緊急時の通報や、事故発生時の適切な対応も求められる |
| サービス品質の向上 | ・観光案内、地域情報の提供など、サービス品質を向上させるためにも日本語能力が重要
・観光バスやタクシーでは、地域の魅力を伝えることも業務の一部となる |
| トラブル時の適切な対応 | ・事故対応、クレーム対応など、トラブル発生時に適切に対応するためにも日本語能力が必要 |
これらを踏まえて有識者会議では、バス・タクシー運転者に係る日本語能力要件の案が提示されました。
具体的な要件レベルとしては、日本語能力試験(JLPT)のレベル設定が検討されています。一般的には、N3以上やN2以上などのレベルが想定されていますが、業務内容によって異なる可能性があります。
ただし、単に試験のレベルだけでなく、業務に必要な具体的な日本語能力を定義することが必要です。たとえば「日常会話ができる」「道路標識を理解できる」「緊急時の通報ができる」など、実務に即した評価方法が検討されています。
また、バス運転者とタクシー運転者では、業務内容に応じた要件の違いが検討されています。たとえば観光バスでは、観光案内のためのより高い日本語能力が求められる可能性が高いです。また、個人タクシーと法人タクシーでも、運営形態に応じた要件の違いが検討されています。
さらに、観光地や国際都市など、地域特性を考慮した要件設定の必要性も議論されています。これらの検討により、バス・タクシー運転者として必要な日本語能力が明確化され、適切な人材確保が可能になることが期待されます。
特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針について
特定技能制度及び育成就労制度では、各分野の特性に応じた適切な運用を確保するため、分野別運用方針の作成が進められています。これまで説明してきた漁業分野の監理支援機関基準の特例や、転籍制限期間の設定などは、この分野別運用方針の一環として検討されています。
分野別運用方針の目的は、各分野の特性や実情に応じた柔軟な制度運用を可能にすること、受入機関や監理支援機関に対する明確な指針を提供すること、制度の適正な実施と人材確保の両立を図ることなどです。
受け入れる人材の基準や重要事項が記載されているので、外国人材の受け入れを考えている企業は、ぜひ参考にしてみてください。
※参照資料
まとめ
「第10回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」で検討された内容をおさらいしましょう。
| 検討された内容 | 詳細 |
| 漁業分野における監理支援機関の許可基準 | 標準的な基準(8者・40人)に対し、漁業分野では16者・32人とする特例を検討 |
| 転籍制限期間の設定 | 基本方針として「1年を目指す」ことが明確化され、人材育成上の必要性と人材確保の必要性を考慮した判断基準を検討 |
| バス・タクシー運転者の日本語能力要件 | 乗客とのコミュニケーションや安全運転のための情報理解など、業務に必要な日本語能力要件を検討 |
これらの検討事項は、今後の制度運用に大きく影響する重要な内容となります。議事要旨と議事録が公開され次第、より詳細な議論内容が明らかになる見込みです。
すでに外国人材を受け入れている企業やこれから受け入れを検討している企業は、制度の運用について理解を深めておきましょう。
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