特定技能「農業」|制度のポイントを紹介

特定技能「農業」とは?
特定技能「農業」は、 2019年4月に出入国管理法(入管法)が改正され、新しい在留資格「特定技能」により、外国人労働者の受け入れが農業でも可能となった新たな在留資格です。これにより、農家の人手不足緩和が期待されます。
農業分野にて就労している外国人労働者は、2022年時点で4万3500人おり、過去5年間でおよそ1.6倍に増加しております。
この特定技能分野においては、受け入れの上限人数が予め定められており、特定技能1号ビザ発行上限(=日本国内での受け入れ人数の上限)は5年間で最大34万5150人。
出入国在留管理庁の発表によれば、2022年12月末での特定技能人材の受け入れ総数は130,915人名と発表。前回に比べ、約50%の増加となっています。
また、2020年4月からは受験可能な在留資格が見直されており、それまで「中長期で在留を認められた者」しか受験できなかったものが、2020年4月以降は短期の滞在資格で来日し、特定技能試験を受験したのちに帰国という選択肢が可能になりました。
農業の現状
日本の農業は、後継者不足による高齢化が深刻であり、過去10年間で100万人もの労働力が減少しています。
現在も労働人口の減少に歯止めがかかっておらず、労働力支援が必要とされています。
内閣府が問題視しているのは深刻な高齢化です。
「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」より
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai7/siryou2.pdf
課題とされているのは農業の高コストと不安定さです。
土地や農機具などの固定費が多く、新規参入が難しい上に、天候不順などで収入にバラつきがあるため、安定志向の若者からは敬遠される傾向にあると言われています。
また農作業が重労働であるという面も見逃せません。
こうした需給のミスマッチにより、2017年の有効求人倍率は1.94倍と高く、人手不足はおよそ7万人と言われています。
これまでも、人手不足の国内農業界においては外国人労働者の受け入れを積極的に行っていました。それが「技能実習」です。
発展途上国を中心に、海外人材に国内の農業技術を教えていく「人づくり」という慈善事業を押し出しつつも、実際の制度運用においては技能実習生を国内の人手不足解消を主目的で受け入れるなど、ギャップが有りました。
外国人技能実習自体は、1993年に制度化されました。
徐々に技能生の受け入れ体制が整い、不適切な扱いを防止するための法整備が2010年代から行われ、今に至ります。
技能実習全体で、人数は2018年だけで12万人を超えました。
在留総数も30万人を超えたと言われています。そのうち農業では技能実習生の受け入れを積極的に行っており、2016年に1万人を超え、以降も右肩上がりに増加をしていました。
農業関係で技能実習生に任せられるのは2職種6作業。
そのうち「耕種農業」の職種では、「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」を、「畜産農業」の職種では、「養豚」「養鶏」「酪農」が可能でした。
特定技能「農業」受入れ可能な人材
技能実習と比べて、特定技能はどうでしょうか。人材と職種を確認していきます。
特定技能「農業」で受け入れ可能な人材の在留資格として「特定技能」は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類がありますが、農業では「特定技能1号」が受け入れ可能です。これは最長5年の受け入れが可能になる資格。家族の帯同は不可となっています。
通しで5年の雇用をするか、例えば農閑期に帰国させ、繁忙期に呼ぶなど半年ごとの業務であれば通算10年間に渡り使役が可能です。
特定技能のほうが、技能実習よりも柔軟な雇用が可能となっております。

https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/attach/pdf/new-27.pdf
技能実習が「人づくり」という要素で形成されているのに対し、特定技能は「人手不足の解消」に重きが置かれています。
そのため特定技能で受け入れる人材は、基本的に経験者。
健康な18歳以上で、日本語が多少話せる、即戦力人材に限定されています。
条件は、①技能実習2号を良好に修了している②技能試験と日本語試験に合格している、の2点です。
上記の条件を満たさない場合は人材の登録や受け入れができません。
受け入れ可能な人材とするためには試験を受ける必要があります。
方法としては4通り考えられます。
①留学生から試験を受ける
国内に留学している人材に国内試験を受けてもらう方法です。
留学しているため語学力の心配が少なく、また接点も多くなるでしょう。
②技能実習2号からの移行
また、現在すでに技能試験2号の在留資格を取得している場合、技能実習2号から在留資格を移行させることができます。
例えばすでに受け入れいる技能実習生を引き続き特定技能人材として受け入れる場合や、過去に受け入れていた技能実習生を再び呼び戻す際などが考えられます。
地方出入国在留管理局への申請が必要になりますが、スムーズな移行が可能です。
③海外で技能評価試験・日本語試験を受ける
更に、特定技能人材向けの試験を海外で行う事例が、さまざまな業種において見られるようになりました。
試験はフィリピンやカンボジア、インドネシア、ミャンマーなど様々な国や都市で実施されており、こちらから日程を確認することができます。(https://asat-nca.jp/exam)
④短期での来日で試験を受ける
日本国内で就業意欲のある外国人技能実習生を受け入れる場合は、国内で試験を受けてもらうことも考えられます。
日程調整やパスポート、航空券の手配等で手間は比較的かかりますが、試験を経て外国人技能実習生に日本や職場を理解してもらいやすく、海外の現地試験よりも就業後のミスマッチは少なくなるでしょう。
また、日本に来ることに前向きな、やる気のある特定技能人材に絞って採用をかけられるのもメリットです。
農業において任せられる業種・業務
農林水産省の「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」によると、受け入れ可能な分野は以下の通りです。
① 耕種農業全般の作業(栽培管理、農産物の集出荷、選別等)
② 畜産農業全般の作業(飼養管理、畜産物の集出荷、選別等)
に従事することが必要です。
2 ただし、その業務内容には、栽培管理又は飼養管理の業務が 必ず含まれていることが必要です。
※ 例えば、農産物の選別の業務にのみ専ら従事させるといったことはできませんの で、ご注意ください。
3 また、同じ農業者等の下で作業する日本人が普段から従事し ている関連業務(加工・運搬・販売の作業、冬場の除雪作業 等)にも付随的に従事することが可能です。 ※ ただし、専ら関連業務に従事することはできませんので、ご注意ください
引用: 農林水産省「農業者向けパンフレット 」
https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/attach/pdf/new-27.pdf
資格と関係しない付属業務を行わせること自体は可能です。
通常従事することとなる業務については、本来業務と関連性があると考えられるというのが法務省の見解であるためです。
もちろん、多少の範囲外業務は認められているとはいえ、任せすぎるのはリスクが大きいと言えるでしょう。
基準としては、同じ農業者等の下で作業する日本人が普段から従事している関連業務(加工・運搬・販売の作業、冬場の除雪作業等)は従事可能です。ただし、もっぱら関連業務に従事させることはできません。
特定技能所属機関(受入れ企業)の要件
受け入れ法人側にも要件があります。
「農業特定技能協議会」に入会し、協議会に必要な協力を行うことが条件として定められています。
特定技能人材を受け入れた後4か月以内に「農業特定技能協議会」に加入し、加入後は農業特定協議会に対し、必要な協力を行うなどしなければなりません。
加入には農林水産省HPから問合せ、申請を行いましょう。
申請時に特定技能人材向け在留カードの交付日や在留カード番号を記入する必要があるため、受け入れが決まってからで大丈夫です。
また、法務省によると、受入れ機関ごとの受入れ数の上限はありません。
特定技能人材の雇用形態
次に特定技能人材の雇用形態について見ていきます。
まず直接雇用を行う場合は、労働契約を技能実習生と締結する必要があります。
参考になるのは2000年に農林水産省から出された「農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について」という項目です。
○労働契約の期間に関する事項
○就業の場所、従事すべき業務に関する事項
○始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就
業時転換に関する事項
○賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。以下同じ。)の決定、計算・
支払の方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
○退職に関する事項
引用「農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について」
https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/attach/pdf/index-45.pdf
派遣での受入れも可能
農業分野では、特定技能分野では珍しく、派遣での外国人人材雇用が可能です。
これは農閑期の存在などで、外国人特定技能生が安定した賃金支払を受けられないリスクが有るとされているため、派遣人材が有効に機能すると判断されているためです。
多くの農家にとって、派遣での雇用可能というのは大きなメリットではないでしょうか。
「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」では、派遣雇用をする場合には以下の要件を満たす必要があります。
(イ)外国人材の派遣先となる事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験がある者又は派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者とする者であること。
引用「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
http://www.moj.go.jp/content/001315491.pdf
また法務省によると、派遣受け入れ法人は以下の要件を満たす必要もあります。
ⅱ 過去1年以内に,特定技能外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていないこと。
ⅲ 過去1年以内に,当該機関の責めに帰すべき事由により行方不明の外国人を発生させていないこと。
ⅳ 刑罰法令違反による罰則を受けていないことなどの欠格事由に該当しないこと。
引用:法務省「外国人材の受入れ制度に係るQ&A」
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003977.pdf
こうしたことから、法律面、労働環境面、そして人権の面から、受け入れ耐性の整っていない法人への派遣は難しそうです。

https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/attach/pdf/new-27.pdf
報酬
特定技能外国人の報酬額については、日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上であることが求められます。
転職
また、同業者内での転職も可能です。
ただし、特定技能生の転職が認められるのは、「同一の業務区分内、または試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間」のみです。
農業の特定技能のみで来日した場合は農業以外の他業種へ転職することはできず、アルバイトも不可能です。
複数の特定技能資格を保つ場合は、在留資格の変更許可申請を出入国在留管理庁が管轄する施設に提出する必要があります。
特定技能「農業」の試験内容
特定技能「農業」の在留資格を得るためにはまず、農業の基礎知識を確認するための農業技能測定試験をパスする必要があります。
また、日本語能力試験を受ける必要もあります。
農業技能測定試験
農業技能測定試験は「畜産」と「耕種」の技能分野に分かれ、試験時間は60分70門程度、日本語音声を聞くリスニングテストと、学科試験、実技試験を含みます。
日本語能力試験
また、日本語能力試験のN4に合格するには、ざっと業務をこなすのに必要な日常会話レベルの日本語力が必要です。JLPTでは「基本的な語彙や漢字を使って書かれた身近な文章を読んで理解できる」「ややゆっくりと話される会話であれば内容がほぼ理解できる」難易度と定義しています。
学習用サンプルテキスト
特定技能「農業」勉強用のテキストはサイトから無料ダウンロードが可能です。
(http://asat-nca.jp/jp/images/ASAT_CF_jpn.pdf)
範囲は日本の農業分類、植物の仕組みから、農機の使用方法、出荷や収穫、施設園芸や果樹まで。特定技能の「即戦力」として基礎をまんべんなく網羅した内容です。試験問題はASATの公式HPでも多く公開されています。
(http://asat-nca.jp/textbook/)
試験申し込み
試験申込みの際はASATの予約受付サイトから問合せを行うことが出来ます。(https://asat-nca.jp/)
「プロメトリックID」を取得し、メールアドレスとパスワード、住所を記入。
アカウントでログイン後、受験したい会場を選択して予約へと進みます。
また本人確認用の顔写真が必要です。
試験日程・開催地
試験日程はASAT公式HPで確認ができます。
試験は様々な国と都市で実施された実績があります。説明会や試験日程など今後の動きについてはホームページをチェックしてください。http://asat-nca.jp/exam/
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