【特定技能】フィリピン人を採用するステップ・注意点を解説。おススメの人材会社を紹介

2019年4月、新在留資格である「特定技能」が新設されました。
この特定技能の在留資格でフィリピン人の採用をしたいと考える企業は多いようです。
フィリピン人はタガログ語(公用語)と同じくらい英語が話されており、英語堪能な人材が多く、資格職はもちろん、介護、看護など、数多くの業界で人気です。
また、在留資格「特定技能」での就労が増え、従来よりも看護・介護分野を始めとする即戦力としての採用ハードルは下がっています。
こうした流れの一方で、フィリピン人受け入れに関するルールやガイドラインは「POEA」「POLO」などと呼ばれる機関との間で手続きが必要となるなど、少々複雑です。そこで今回は、特定技能の在留資格でフィリピン人を採用するメリットと、手続きのステップ・注意点を解説します。
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在留資格を取得しているフィリピン人
在留資格(技能実習、留学、技人国、家族帯同、永住者)とぞれぞれの人数
フィリピンは現在、アジアの中でも発展が著しい地域と言われています。大きな要因は働き盛りの若年人口層が厚いこと。こうした労働者層は、フィリピン現地での労働力にとどまらず、日本を始めとする国外への「出稼ぎ」も活発です。
特定技能の制度施行前の2018年6月調査で日本国内に在留するフィリピン人は、すでに26万6803人でした。
この人数は、中国(74万人)、韓国(45万人)ベトナム(29万人)についで多く、4番目。国内に在留する外国人の1割強にあたる数値に相当します。既に日本で生活しているフィリピン人は、外国人の中でもかなり多い方と言うことができ、この人数の多さは、フィリピン人の採用のしやすさや入国のしやすさにプラスに作用すると考えられます。
なお、2018年時点で、フィリピン人は以下の在留資格を活用して日本に在留していました。
【留学】 8万683人
【技術・人文知識・国際業務】 2万8723人
【家族滞在】 3,234人
【永住者】 12万8,446人
またこの他に、日本人配偶者等が2万6538人、定住者が5万1097人と、すでに多くのフィリピン人が国内で生活し、就労しています。
特定技能フィリピン人を採用するメリット
教育レベルが高い
フィリピンから特定技能人材を採用するメリットのひとつとして、高等教育機関が他の東南アジア諸国に比べて多いことが挙げられます。
例えば、英国のクアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds:QS)が認定した世界各地の高等教育機関はベトナムで436校(2015年)、マレーシアが654校(2014年)に対し、フィリピンは1856校の高等教育機関があります(2012年)。
また整備の遅れていた義務教育や中等教育にもメスが入れられています。
フィリピンの教育システムは2011年までK10 (幼稚園▶小学校6年▶高校4年)でしたが、アキノ大統領の特別命令で、2012年からK to 12(幼稚園2年▶小学校6年▶中学校4年▶高校2年) に変わりました。
貧困や政情不安から遅れていた教育システムが改善途上にあり、今後もますます労働年代層が優秀になっていく傾向にあると考えられます。
そして大学数・職業訓練校も充実しています。
フィリピンにおける技術教育や職業訓練を管轄しているのは、労働雇用省(Department of Labor and Employment: DOLE)下の技術教育・技能開発庁(TESDA)と呼ばれる機関です。
TESDAが管轄する職業訓練校、高等教育機関、訓練機関、その他国公立の大学や農業校などの機関数は2017年時点で計3,966にのぼると言われています。これは2007 年からの 10 年間で約 600 機関増加したことになり、その注力ぶりが伺えます。
国外労働に抵抗が少ない
また2つ目に、出稼ぎ国家として海外に出て働くことに抵抗感が少ないこともメリットです。
フィリピンはその産業構造から、国内よりも国外のほうが給料が良いケースが多いため、フィリピン人の出稼ぎ労働者も数多く存在します。2015年時点で中東に約91万人(63.6%)、アジアに約40万人(27.8%)が働いています。その他欧米諸国にも看護士・介護士などを中心に人材が出ており、彼らは実家の親族に向けてその給料の多くを送金しています。2018年の出稼ぎ労働者ら在外フィリピン人からの送金額は289億ドル(約3兆2000億円)でした。
また2008年12月には日比間で経済連携協定(EPA)が発効し、フィリピン人看護師候補者588名、及び介護福祉士候補1967名が来日しました。
日本はフィリピン人にとって、先進的な技術力のある国として見られており、世界基準でも親日家の多い国のひとつです。給料などの雇用条件次第では非常にスムーズな採用・受け入れが期待できます。
また、介護などでの出稼ぎ人材の平均学歴も高く、2010年時点での「出稼ぎ人材」のうち41.3%が大学を卒業しており、高卒と合わせると9割近くなります。
現在はフィリピン国内の教育制度が整い、ミドルクラスの教育を受けた英語堪能な人材が数多く存在すると言えるでしょう。
他在留資格に比べて、就労しやすい
彼らを特定技能ビザで招聘するメリットとしては「就労のしやすさ」が挙げられます。
特定技能は、技能実習2号を良好に修了した人材には試験の一部免除が可能であり、また即戦力として日本人と同等の待遇を義務付けられた、いわば雇用側にも就労側にもメリットの有る制度です。就労側にとってもより長期滞在が可能になり、同業界内であれば転職も可能です。(例えば介護業界内、宿泊業界内など)
更に、技能実習制度が存在しなかった外食・宿泊は特定技能によって新たな外国人受入れの門戸が広がり、人材不足を解消する大きなピースとなるポテンシャルを秘めています。
介護や農業などの大半の業種では、累計5年まで滞在可能な「特定技能1号」、建設業、造船舶用工業においては滞在可能な年数の上限がなく妻帯も可能な「特定技能2号」も用意されています。未経験者を技能実習で採用し、経験者を特定技能で採用することで、人手不足を緩和し事業の推進力を高められると期待されています。
若くホスピタリティあふれるフィリピン人
採用におけるフィリピン人の大きな強みはその若さです。
2013年の国連人口統計で、フィリピンの平均年齢は24.3歳(日本は48.9歳:2020年)。さらに生産年齢人口(15~65歳)が他の年齢層と比べてより高い比率となる「人口ボーナス期」は2091年まで続くと予測されています。
また家族想いな国民性であり、海外で働いた報酬を自国の親族に送っています。その総金額はフィリピンGDPの1割を占めると言われています。
また南国特有の明るさ、寛容さなど、他人へのホスピタリティ意識はかなり高く、自国の家族を助けるためであれば多少の苦労を厭わずに熱心に働きます。介護や看護、宿泊分野といった対人関係の重要な仕事に適正のある人材も多いと考えられます。
特定技能で採用する際の注意点
フィリピン人の特定技能人材採用に関してはメリットも多いですが、注意すべき点もあります。特に手続きの流れは、POEAやPOLOとのやりとり、また書類や面談などで複雑と感じられるかもしれません。
フィリピン海外雇用庁(POEA)への登録
特に手続きの際、Philippine Overseas Employment Administration(フィリピン海外雇用庁:POEA) を経由することは見逃せないポイントです。法務省によると、
引用:法務省「フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ」http://www.moj.go.jp/content/001315103.pdf
つまり、送り出し国となるフィリピンは自国の出稼ぎ人材を把握し保護するために、出稼ぎ労働者をPOEA経由で出国させているのです。
採用を予定されている企業はPOEAの出先機関であるPhilippine Overseas Labor Office(駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所:POLO) の示す様式に則って手続きを行います。
労働条件等を記載した雇用契約書のひな形、募集取決め要項、求人票、求職票等をPOLOに送り、POLOから雇用主として認可される必要があります。
うまく手続きが進むとおよそ2週間程度でPOLOに認可され、次のステップとして受入機関の代表者の方又は委任された従業員の方がPOLOと英語で面接を受ける必要があります。コンサルや行政書士等の外部の人間をPOLOとの面接会場に入れることはできませんが、通訳の同席は可能です。必要に応じてPOLOによる受入機関の実地調査が行われる可能性もあります。
上記のPOLOに提出した書類とPOLOによる面談によって受け入れ機関として適正と判断された場合、認証印が押印された提出書類一式と推薦書が郵送されてきます。これをPOEA に送り、POEAに受理されることで、フィリピンでの募集活動が可能になります。
OECの発行
フィリピン人の採用が決まったらOverseas Employment Certificate(海外雇用許可証:OEC)を発行する必要があります。出国審査時に必要となるもので、フィリピン側の手続きが完了した証明書にあたります。
ビザを取得し、所定の出国前オリエンテーションと健康診断を済ませたあと、POEAにOEC発行を申請します。送り出し機関との手続きからPOEAへの登録、申請、POLOとのやり取りといったフローは法務省サイトに掲載されています。
参考:法務省 http://www.moj.go.jp/content/001315102.pdf
その他、日本政府とフィリピン政府間での二国間協定である「特定技能に係る協力覚書(MOC)」に基づいたガイドラインが示されており、この協定にはフィリピン人採用で遵守すべき内容が記されています。
特に留意したいのは、以下の部分です。(※下記リンクからの弊社日本語訳となります)
Ⅵー3 特定技能人材が転職した場合はPOLOへ申請を行わなくてはならない
・
・
・
Ⅶー1 直接的でも間接的でも、特定技能人材から金銭徴収を行うことはできない
Ⅶー2 また手当や賃金の控除を行うこともできない
参考:「DEPARTMENT OF LABOR AND EMPLOYMENT」 https://www.dole.gov.ph/wp-content/uploads/2019/03/DO-201-19-Guidelines-on-the-Deployment-of-Workers-to-Japan-under-the-Status-of-Residence-Specified-Skilled-Worker.pdf
採用の際にかかる費用
教育・訓練費用
特定技能人材に向けた日本語教育や職業訓練は、日本側が負担します。受け入れ企業や人材紹介会社が持ち出し、認定送り出し機関に振り込むことがほとんどです。特定技能人材から費用を徴収することは法的に不可能です。
渡航費用
フライト料金などの渡航に必要な費用も、受け入れ企業や人材紹介会社などの日本側の負担です。現在は日比間の往来は厳しく制限されておりますが、コロナ前は飛行機で往復2万円~7万円程度でした。
送り出し機関に対する手数料
上記の育成・交通経費のほかに、送り出し機関は、外国人1人につき1500-5000米ドル(15万~50万円)ほどの手数料を取っています。
採用ルート
フィリピンから来日する場合(元技能実習生、特定技能試験合格者)
フィリピン人の来日採用には、現地の送り出し機関と連携が必須になります。
フィリピン政府が認定を出している送り出し機関に依頼し、求人をしましょう。基本的には、語学(日本語)と特定技能分野に準じた技能試験が必要です。(ただし、現在すでに技能試験2号を修了している場合、技能実習2号から特定技能へ移行させることができます)
採用ルートは、すでに技能実習などで面識があり連絡が繋がるのが最良ですが、日本人と同様にハローワークや求人広告を出すやり方があり、また人材紹介業の中にも活発に外国人の紹介を行っている企業があります。
日本人採用とフィリピン人採用で異なる点としては
・POLOまたはフィリピン総領事館による承認が必要であること
が挙げられます。
流れはまず受入機関と送り出し機関で募集取り決めの締結を行い、POLOへPOEAへの登録申請、POLOからの承認を経て、送り出し機関経由で労働契約の締結をしていきます。その後、国内の地方出入国在留管理局に在留資格認定の証明書交付を申請し、この認定書を特定技能人材に送り、査証をとってもらい来日というスキームになります。
別途、特定技能人材の内定後、雇用契約を締結し、支援義務のある「事前ガイダンス」「健康診断」の実施を行います。これは登録支援機関へのアウトソーシングが可能です。
これで就労可能となります。入国前に生活オリエンテーション、住居の確保や口座の開設、携帯の支給など、支援計画を定め、特定技能人材のスムーズな就労開始ができる体勢を整えましょう。

すでに日本にいる場合(技能実習修了者、留学生)
すでに日本国内に居住し、日本国内で就業意欲のある外国人技能実習生を受け入れる場合は、国内で資格取得試験を受けてもらうことも考えられます。
留学生や、すでに何らかの形で国内に在住するフィリピン人は、日本の職場や文化を理解してもらいやすく、海外からの現地試験受験者よりも就業後のミスマッチは少なくなるでしょう。 また、日本で働くことに前向きな、やる気のある特定技能人材に絞って採用をかけられるのもメリットです。
流れは国外採用と似ており、まず送り出し機関に登録、POLOへPOEAへの登録申請、POLOからの承認を経て、送り出し機関経由で労働契約の締結をしていきます。OEC(海外雇用許可証)の発行申請は不要となります。
考えられるのは、国内に留学している留学生が国内試験を受け、特定技能の資格取得支援を行う方法です。留学しているため語学力の心配が少なく、また接点も多くなるでしょう。
また現在在留している、技能実習2号以降修了者予定者の中で、より長期にわたって就労を希望する人材は特定技能への移行がスムーズなためお勧めです。技能実習2号以降を良好に修了している場合、実技など一部試験が免除となります。

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