【特定技能】ネパール人を採用するステップ・注意点を解説。
インドと中国のチベット自治区の間に位置する内陸国、ネパール。国土の約8割が丘陵や山岳地帯で、世界最高峰の山エベレストを含むヒマラヤ山脈があることでも知られています。意外に感じるかもしれませんが、ネパールは日本と同じアジアの国の一つ。世界で唯一、四角形ではない独特な形の国旗は、日本国内に多数あるネパール料理店でも目にしたことがあるかもしれません。遠いようで、実は日本人にもなじみのあるネパールから特定技能労働者を受け入れるには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
特定技能人材として見るネパール人
現在日本に在留しているネパール人
令和5年6月末時点での在留外国人数は全体で322万3,858人(前年末比14万8,645人、4.8%増加)で、過去最高を更新。その内ネパールからは、中国・ベトナム・韓国・フィリピン・ブラジルに続き6位となる156,333人が日本で生活しています。
主な在留資格別では、家族滞在、留学、技術・人文知識・国際業務、永住者、特定技能、技能実習、日本人の配偶者等、定住者の順に多く、中でも特定技能での在留者数は対前年末増減率46.5%と飛躍的に増加しています。ネパール人の特定技能労働者は他国と比べても、またネパール人在留者の中で比較しても近年増加傾向にあると言えます。
在留資格 | 在留者数(人) | 対前年末増減率(%) |
---|---|---|
特定技能 | 3428 | 46.5 |
技能実習 | 1652 | 30.5 |
技術・人文知識・国際業務 | 31043 | 20.7 |
留学 | 45095 | 13.7 |
定住者 | 1214 | 9.9 |
その他 | 18840 | 9.5 |
家族滞在 | 45987 | 8.7 |
日本人の配偶者等 | 1271 | 5.7 |
永住者 | 6716 | 5.3 |
特定活動 | 1084 | -50.5 |
参考:出入国在留管理庁「令和5年6月末現在における在留外国人数について」、「【第1表】 国籍・地域別 在留外国人数の推移」
ネパール人の国民性
日本での就労実績が着実に増加しているネパール人材。高齢化が進む日本に対し、ネパールの平均年齢は20代中ごろと若く、将来的にも継続して若者が活躍してくれる見込みがあります。雇用に際し、企業側のメリットになるポイントや注意点は何があるのでしょうか。ネパール人の基本的な国民性や、現在の状況から見ていきましょう。
言語について
ネパール国内では多様な民族が共存しており、複数の言語が使用されています。そのため、知らない言語は自ら学ぶことが自然と根付いており、日本語の習得にも抵抗なく取り組む姿勢が見られます。公用語であるネパール語と日本語の文法が似ている点でも、日本語になじみやすいと言えるでしょう。また、学校教育では英語で行われているので、英語でのコミュニケーションも問題なく行えます。
性格・仕事への姿勢について
ネパール人は一般的に勤勉で責任感があり、仕事に対しても真面目に取り組みます。また家庭を大事にすることを重要視しており、国外に出て家族のために仕送りする働き方が珍しくありません。ネパールは賃金が低く物価が高いため、日本は賃金の高さから、出稼ぎ先として人気の選択肢の一つとなっています。このような状況からネパール人の仕事へのモチベーションは高く、離職もしづらい傾向にあります。
家族思いな性質は、身内への尊敬・尊重にもつながります。目上の人や先輩を敬ったり、チームワークを大切にする姿勢は、対人関係が要となる業種や職場でも重宝されるでしょう。
ネパール時間とは
仕事に意欲的な一方で、時間に対してはのんびりした国民性であり、「ネパリタイム(ネパール時間)」という言葉があるほどです。
時間厳守を重んじる日本とは異なる感性を持っているため、雇用の際は事前に説明をしておくのが無難でしょう。
ネパールはもともと他民族社会で、多様な文化を受け入れることに寛容です。日本の働き方に対しても、有無を言わさず押し付けるのではなく、丁寧に必要性を説けば前向きに順応してくれるでしょう。
宗教・文化への配慮が重要
ネパールでは主にヒンドゥー教が信仰されており、牛肉を食さないなど、宗教由来の文化・生活習慣が染みついています。厳格な教徒であれば、肉食全般を避けたり、食事の相手や時間にも気を配る必要があるでしょう。
人によって宗教は生活基盤にかかわる大切なものです。「郷に入れば郷に従え」ではなく、相手の文化的背景を受け入れる姿勢で交流することが大切です。
特定技能ネパール人の採用の仕方
ここでは、具体的にネパール人を特定技能採用するための流れを説明します。その中で、他国と比べての手続き上のメリットや、注意すべき点についても触れていきます。
ネパール人採用のメリット
ネパール大使館を通して募集を行える
ネパールでの求人活動を行うには、もちろん自力でも可能ですが、ネパール大使館を通して募集を行うのが安全かつ効率的です。在ネパール日本国大使館とネパール外務省との間で交換された口上書(MOC)では、以下の様に日本とネパールの各機関が人材の送り出し・受け入れに対して協力体制を取っていることが示されています。
【MOC概要】
出入国在留管理庁:「ネパールに関する情報」https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri06_00104.html
日本国法務省、外務省、厚生労働省及び警察庁は、ネパール労働・雇用・社会保障省と協力し、以下の事項等を通じて、特定技能における悪質な仲介事業者の排除に努め、ネパールからの有為な人材の円滑かつ適正な送出し・受入れを促進していきます。
・ 仲介事業者等による保証金の徴収、不法な金銭の支払いに係る定め及び人権侵害行為等の情報を含む、円滑かつ適正な送出し・受入れに資する情報の共有
・ 本制度の適正な運用に向けて改善が必要となる問題の是正のための協議の実施
送り出し機関の利用は任意
通常、海外人材を日本で雇用する際は現地の送り出し機関を利用する必要がありますが、中には違法性のある機関も少なくありません。もちろん合法的な機関を使う必要があるので、それを見定めるだけでも採用までの手間を増やすことになります。
ですが、ネパールでは上記の通りネパール労働・雇用・社会保障省という公的な機関がその役目を担っているので、安全面を保証した上で採用活動を行うことができます。
政府を通すためには費用も発生しますが、時間・安全性とコストを照らし合わせた合理的な判断が必要になるでしょう。
国外・国内からのプロセス比較
ネパール人を特定技能採用する際、国外から呼び寄せるのか、もしくはすでに日本にいるネパール人を雇用するのかによって、プロセスや費用が異なります。
国外から雇用する場合
現地に直接赴いての採用活動も可能ですが、現地拠点を持っている場合などを除いて現実的には難しいと言えるでしょう。上項のポイントにより、大使館を通して求人を行うことで採用までの負担を減らせます。
▼日本企業側が行う手続き
- 大使館を通しネパール国内に求人情報を紹介してもらう(有料)
- 求人へ申し込んだネパール人労働者と雇用契約を結ぶ
- 地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書」を申し込む
- 交付された「在留資格認定証明書」を、ネパール人労働者に送付する
▼ネパール人労働者側が行う手続き
- 在ネパール日本国大使館に特定技能の査証(ビザ)を申請、取得
- ネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局の日本担当部門へ海外労働許可証を申請、取得。
- 海外労働許可証を提示し出国する。
この他にも健康診断や海外労働保険への加入など必要な手続きが複数あります。十分な日程を考慮して、都度確認しながら進めていくとよいでしょう。
国内から雇用する場合
すでに日本に在留しているネパール人を雇用する場合は、出国のプロセスをすでに経ていることから、ハードルが少し下がります。特に日本企業側の手続きは少なく済みます。国内へ向けて自社で求人広告を出すことはもちろん、ネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局日本担当部門へ申し込んでの求人も可能です。
▼日本企業側が行う手続き
- 求人へ申し込んだネパール人労働者と雇用契約を結ぶ
▼ネパール人労働者側が行う手続き
- 地方出入国在留管理局に在留資格を特定技能へ変更する許可申請を行う
- 在留資格が特定技能へ変更完了すれば手続き終了
※注意点
他の外国人労働者と異なり、一時帰国の際に海外労働許可証が必要となります。帰国前にネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局日本担当部門へ発行を申請し、帰国時や、日本に戻るため再びネパールを出国する際にも海外労働許可証を提示します。
採用の際にかかる費用
特定技能採用において、各プロセスごとにかかる費用を把握しておくのも重要です。以下に必要となる費用の概略をまとめます。
在留資格の申請・更新費用
在留資格の申請は出入国在留管理局へあてて行い、無料で申請が可能です。更新時には収入印紙代として4000円を支払います。どちらの場合も、行政書士等に代行を頼む場合は費用が発生します。日本側企業の状況により確認事項や必要書類が変わるため、専門家への依頼も視野に入れ申請を進めていきましょう。
義務的支援に関わる費用
特定技能労働者を受け入れる企業には、順守すべき義務的支援項目があります。健全な就労・生活環境を確保するため、きめ細やかなサポートと相応の費用が個々の場面で必要となります。
- 事前ガイダンスの実施
- 空港送迎
- 住居に係る支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続き等への同行
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職に関する支援
- 定期的な面談・通報
給与・福利厚生
特定技能労働者の給与は、同程度の技能を有する日本人と同額か、それ以上の金額でなければなりません。なぜならば、特定技能労働者は技能試験と日本語試験に合格した者、もしくは技能実習2号・3号を満了した者であり、日本人と同水準以上の報酬を求められているからです。
福利厚生についても特定技能労働者は支給対象となります。特定技能労働者であることで福利厚生に差をつけることはできないと規定上でも明言されています。
登録支援機関や人材紹介会社への費用
特定技能人材とのマッチング・紹介や、義務的支援を含む就労前・就労後のサポートを行う機関・企業を利用する手段もあります。相応の費用は掛かりますが、煩雑な手続きを代行してもらえたり、慣れない外国人採用についての相談もできるなど、メリットも大きいです。担当者の負担を減らすことで本業務が滞る心配もなく採用を進められるでしょう。
まとめ:ネパール人の特定技能採用の特徴
- ネパールからの特定技能採用は年々増加傾向にある
- 募集先が日本国外/国内でフローが異なり、国内から募集した方が手続きがシンプル
- ネパール大使館を通して安全な採用活動が可能
- 送り出し機関の利用は任意
- 国内で採用した場合も、特定技能採用した場合は入出国時に海外労働許可証が必要となる
採用までのフロー
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