【特定技能】スリランカ人を採用するステップ・注意点を解説。
インド洋の島国、スリランカ。北海道の約8割に相当する大きさで、自然が豊かな様子から「インド洋の真珠」とも呼ばれています。イギリスの植民地時代にはセイロンという国名だったことからも伺えるように紅茶の生産が盛んで、他の主要産業は農業と繊維業。仏教や主食が米であることなど、日本との共通点も多く見られます。そんなスリランカから特定技能労働者を受け入れるポイントを説明していきます。
スリランカ人の特徴
基本的なスリランカ人の国民性
スリランカと日本の絆
第二次世界大戦終結の際、当時はセイロンという国名だったスリランカのジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ大統領は、仏教の「憎悪は憎悪によって止むことなく、愛によって止む」という教えから、対日賠償請求権を放棄。戦勝国により日本を分断統治する流れが強まっていた中で、日本が復興するきっかけを与えてくれました。
その後、スリランカは世界中でいち早く日本と国交を結んでいます。戦後の著しい発展により、欧米諸国とも肩を並べるほど成長した日本は、アジア諸国からも大いなる期待を寄せられていたからです。日本とスリランカの親交は今日も続き、災害支援や技術援助などでお互いに助け合う関係性にあります。そのため、国民性も全体的に親日の傾向にあります。
教育・言語について
スリランカでは小学校から大学まで無料で通えることから、小学校第1学年の就学率はほぼ100パ−セントと、教育が行き届いています。しかし、大学進学率は2%。国内に大学が少なく、倍率が高いのがその理由です。その結果、学生の多くが大学試験に向けて猛勉強をすることになり、スリランカ人の学力が高くなっているともいわれています。また公用語のシンハラ語は日本語と文法が似ており、さらに2022年8月からは義務教育に日本語が加わっていることからも、日本語に親しみやすく習得しやすい民族であると言えます。
参考:アジア途上国障害情報センター「スリランカ 概要」
家族や身内を思いやる性格
国民の70%が仏教を信仰しており、平和を重んじて家族や身内を尊重するスリランカ人。日本人とも価値観が共通する部分は多いでしょう。日本のドラマ「おしん」が大人気で何度も再放送されていることからもそれが伺えます。
昔ながらの礼儀や上下関係を大事にする一方で、男尊女卑的な考えが残っていることも特徴の一つです。特定の職業に対し、地位の低い人が就く仕事というイメージも持っているため、日本で働く際にはお互いの文化を理解した上で誤解を生まないよう説明を行うとよいでしょう。
高いコミュニケーション能力
一般的にフレンドリーで気さくな人が多いスリランカ人。おしゃべり好きで、目が合えば知らない人同士でも挨拶したり、ついつい話し込んだり、といった事が日常です。食事も一人よりグループで話しながら、シェアしあって楽しみます。日本人よりもはきはきと自分の意見をはっきり言いますが、お互いを尊重しあうので対立はしません。仕事の上でも、思いやるあまり遠回しな言い方をするより、相手を信じて率直に伝えたほうが活発なコミュニケーションにつながるかもしれません。
仕事への姿勢に対して
仕事に対しては、地位を重んずるため勤勉で努力家です。一方で、時間に対しては日本人に比べのんびりとしています。遅刻しても悪びれず、相手が遅れても怒りません。日本人が世界の中でも特に時間に厳しい民族ゆえに起こるギャップですが、日本での働き方として理解してもらえるよう、初めに話をしておくとスムーズでしょう。
スリランカの置かれている現状
経済危機による海外就労の増加
熱心な教育体制、70歳を超える平均寿命、途上国の中では乳児死亡率も極めて低い環境と、安定して発展しているように見えるスリランカ。2009年に内戦が終結したあとは、順調に経済成長を遂げてきました。しかし現状は、新たな経済危機の中にあります。気象災害による農業など一次産業への打撃、コロナ禍による観光産業の停滞が主な原因です。
物価上昇・燃料不足により通貨の価値が下がることで、国民の生活はより困難に。相対的に価値のあがる外貨を得るため、国外へ出稼ぎに出る傾向が強まりました。国もその動きを支持し、公務員へ最大5年間の海外就労を認める制度を新たに制定するなど、国民の海外就労を後押ししています。
参考:ワールド・ビジョン「3分でわかるスリランカ ~スリランカって、どんな国?~」
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)「背景に政府による促進策(スリランカ)日本での就労希望者が増加中」
日本への就労にも追い風が
スリランカから日本への在留者は、2023年12月時点で46,949人。国別で見ると上から14番目で、トップの中国(821,838人)、ベトナム(565,026人)と比べるとその規模は大きいとは言えません。しかし、スリランカからの日本在留者は年々増加の勢いを増しています。中でも在留資格別で見た際、特定技能での在留者は他の項目に比べ人数の規模は小さいものの、2021年~2023年の間に400%と著しい増加率を見せています。
在留資格 | 2021年(人) | 2022年 (人) | 2023年 (人) | 2021年から 2023年の増加率(%) |
---|---|---|---|---|
技術・人文知識・国際業務 | 7,344 | 9,890 | 12,223 | 66.45 |
留学 | 3,452 | 6,124 | 10,378 | 200.74 |
経営・管理 | 1,540 | 1,919 | 2,369 | 53.77 |
技能実習 | 712 | 1,162 | 1,752 | 146.07 |
企業内転勤 | 632 | 1,031 | 1,058 | 67.41 |
特定技能 | 199 | 374 | 995 | 400.50 |
定住者 | 494 | 570 | 684 | 38.46 |
永住者 | 3,573 | 3,802 | 4,007 | 12.13 |
総数 | 28,986 | 37,251 | 46,949 |
参考:出入国在留管理庁【在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表】
スリランカ人が日本での就労を希望する理由はいくつかあります。日本の高い技術力を就労を通して身につけられることや、人手不足の問題を抱えている日本では将来的にも就労機会が継続して見込まれるというのもその一部です。特に、日本の技術を得た人材が帰国後に母国で活躍することはスリランカ政府も大いに期待しており、日本への労働市場開拓を後押しする流れもあります。
また、日本側も平成31年4月から発足した特定技能制度の下、各国との協力覚書(Memorandum of Cooperation, MOC)の作成を通して協力体制の強化を進めてきました。スリランカとも、以下の様に協力覚書の署名・交換を行っています。
【MOC概要】
出入国在留管理庁:「スリランカに関する情報」
日本国法務省、外務省、厚生労働省及び警察庁は、スリランカ通信・海外雇用・スポーツ省と協力し、以下の事項等を通じて、特定技能における悪質な仲介事業者の排除に努め、スリランカからの有為な人材の円滑かつ適正な送出し・受入れを促進していきます。
・ 仲介事業者等による保証金の徴収、違約金の定め及び人権侵害行為等の情報を含む、円滑かつ適正な送出し・受入れに資する情報の共有
・ 本制度の適正な運用に向けて改善が必要となる問題の是正のための協議の実施
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri06_00107.html
今後一層、日本での就労機会が広がりそうなスリランカ人材。では、スリランカ人を実際に雇用する際にはどんなプロセスやポイントがあるのか見ていきましょう。
特定技能スリランカ人の採用の仕方
スリランカ人採用の流れ
求人を行う
まずはスリランカ人材を見つけるところから始めます。人材の見つけ方は大きく分けて以下の3通り。
1.送り出し機関の利用
スリランカでの特定技能採用には、送り出し機関の利用は必須ではありませんが、もちろん利用することもできます。しかし、中には非合法の機関も存在するため、機関の選定は慎重に行う必要があります。
2.求人サイトへの出稿
自分で直接求人を行う場合は、海外での募集に対応した求人サイト・サービスに出稿することが一般的です。ですが、こちらの希望する言語スキルや就業に必要な技術を持っているかなど、条件に合う人材に出会えるかは注意が必要です。
3.人材紹介会社を利用
おススメは、人材紹介会社に依頼して、日本就労を希望するスリランカ人とのマッチングをしてもらう方法です。相応の費用は掛かりますが、あらかじめ登録されている人材から選ぶことで安心して採用できますし、その後の手続きなどあらゆるサポートを請け負ってくれる企業もあります。
海外人材採用では手続きの多さに時間が取られて本業務が圧迫されることも少なくありません。専門的サポートを行う企業の手を借りるのも、効率的な手段の一つです。
国外・国内からのプロセス比較
次に、見つけた人材と雇用契約を結び、実際に就業スタートするまでのプロセスを紹介します。国外から呼び寄せて雇用する場合と、すでに日本にいるスリランカ人を雇用する場合とでプロセスが異なります。
国外から雇用する場合
▼日本企業側が行う手続き
- 求人へ申し込んだスリランカ人労働者と雇用契約を結ぶ
- 地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書」を申し込む
- 交付された「在留資格認定証明書」を、スリランカ人労働者に送付する
▼スリランカ人労働者側が行う手続き
- 「在留資格認定証明書」を在スリランカ日本国大使館に提示し、特定技能ビザを申請
- スリランカ海外雇用促進·市場多様化担当国務省海外雇用局(SLBFE)へ、オンラインで海外労働登録を行う
- 出国前オリエンテーション(2日間程度)を受講する
注意:特定技能ビザ申請の際、健康診断結果の提出を求められますが、検査結果の有効期限は受信日より3ヶ月以内とされています。
国内から雇用する場合
すでに日本に在留しているスリランカ人を雇用する場合は、プロセスがシンプルになります。
▼日本企業側が行う手続き
- 求人へ申し込んだスリランカ人労働者と雇用契約を結ぶ
▼スリランカ人労働者側が行う手続き
- 地方出入国在留管理官署に対し、在留資格を「特定技能」へ変更する申請を行う
- スリランカ海外雇用促進·市場多様化担当国務省海外雇用局(SLBFE)へ、オンラインで海外労働登録を行う。
参考:出入国在留管理庁「スリランカに関する情報」https://www.moj.go.jp/isa/content/001338532.pdf
採用の際にかかる費用
特定技能採用において、各プロセスごとにかかる費用を把握しておくのも重要です。以下に必要となる費用の概略をまとめます。
在留資格の申請・更新費用
在留資格の申請は出入国在留管理局へあてて行い、無料で申請が可能です。更新時には収入印紙代として4000円を支払います。どちらの場合も、行政書士等にに代行を頼む場合は費用が発生します。日本側企業の状況により確認事項や必要書類が変わるため、専門家への依頼も視野に入れ申請を進めていきましょう。
義務的支援に関わる費用
特定技能労働者を受け入れる企業には、順守すべき義務的支援項目があります。健全な就労・生活環境を確保するため、きめ細やかなサポートと相応の費用が個々の場面で必要となります。
- 事前ガイダンスの実施
- 空港送迎
- 住居に係る支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続き等への同行
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職に関する支援
- 定期的な面談・通報
給与・福利厚生
特定技能労働者の給与は、同程度の技能を有する日本人と同額か、それ以上の金額でなければなりません。なぜならば、特定技能労働者は技能試験と日本語試験に合格した者、もしくは技能実習2号・3号を満了した者であり、日本人と同水準以上の報酬を求められているからです。
福利厚生についても特定技能労働者は支給対象となります。特定技能労働者であることで福利厚生に差をつけることはできないと規定上でも明言されています。
登録支援機関や人材紹介会社への費用
求人の項目でも紹介しましたが、特定技能人材とのマッチング・紹介や、義務的支援を含む就労前・就労後のサポートを行う機関・企業を利用する手段もあります。実務の代行による効率化はもちろん、慣れない外国人採用について相談できることも大きなメリットと言えます。
まとめ:スリランカ人の特定技能採用の特徴
- スリランカからの特定技能採用は近年急速に増加している
- 募集先が日本国外/国内でフローが異なり、国内から募集した方が手続きがシンプル
- 送り出し機関の利用は任意で、直接採用活動が可能
- 人材紹介会社の支援を受けることで効率的に採用できる
採用までのフロー
【PR】特定技能人材の中途採用はスキルド・ワーカー
2019年に成立した在留資格「特定技能」により、日本国内に外国人人材の受け入れが始まりました。
特定技能で外国人材を採用する企業が着実に増える中、特定技能人材側の転職希望者も増えてきました。
そもそも特定技能は日本人と同等条件での就業が前提。
日本人がごく普通に転職するように、技能人材に転職希望者が出てくるのは自然な流れと言えます。
特定技能人材の転職希望者の多くは仕事に対するモチベーションは高いものの、職場環境とマッチしていないがゆえに活躍し切れていないケースがほとんどなのが現状です。
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