特定技能「ビルクリーニング」|外国人を雇用するために必要な準備・ステップ・注意点とは?
特定技能「ビルクリーニング」について
2019年4月に入管法が改正され、新しい在留区分である「特定技能」が新設されました。従来、日本で働くことができるのは高度で専門的な技能を持った外国人のみでしたが、今回の在留資格「特定技能」の新設により一般的に単純労働とされている分野においても外国人の労働が可能になります。
【おすすめ記事】
在留資格「特定技能」に関しては、こちらの記事をご覧ください。
全14業種にて特定技能人材を受け入れると発表されていますが、今回は建物やビルなどの清掃などを行う「ビルクリーニング」業界の特定技能制度について紹介いたします。
特定技能「ビルクリーニング」 受け入れ人数
この記事をご覧の皆さんの中には、ビルクリーニングにおいて、特定技能制度を活用し外国人を雇用する際に必要な準備や注意点には何があるのかという疑問を抱いている人もいると思われます。
ビルクリーニングとは、私たちが日ごろ利用するビルや建物内の衛生環境を清潔に保ち、整備を行う仕事です。
近年、国内の労働者不足からビルクリーニング業界においても外国人労働者の雇用のニーズが増加しています。
ビルクリーニング分野において、特定技能人材の受け入れは、令和6年3月迄で5年間で受入れ最大数が20,000人を予定していました。
そして新たに令和6年4月から5年間での受入れ人数としては、37,000人が見込まれています。
そこで今回の記事では、特定技能制度を活用し、ビルクリーニング分野で外国人を雇用する際に必要な準備や注意点について説明していきます。
(https://www.mhlw.go.jp/content/11157000/000505128.pdf)
業界の現状
ビルクリーニング業界の現状としてはあまり芳しくない状況であり以下のような状況に陥っています。
①ビルクリーニング業界の人手不足
ビルクリーニング業界は現状人手不足に陥っており、厚生労働省の資料によると平成29年度の有効求人倍率が2.95倍という数値を記録しているうえ、若手の労働者・求職者の数が少なく労従業者のうち65歳以上の高齢者が37.2%を記録するなど高齢化が進んでいます。
ビルクリーニング関連企業においては、採用活動が困難な状況となっています。
このような状況に陥ってしまった主な理由としては、以下のようなものが考えられます。
1. 特別なスキルや資格が不要で業界への参入障壁が低く業者が乱立しているため業務ごとの単価が低く、労働者の人件費を上げることができないこと
2. ビルクリーニング業界全体が、自分たちの業界に人材を定着させるために積極的ではなかったこと
業務ごとの単価が低く、労働者の人件費を上げることができないことから、非正規労働者の割合が多く、ビルクリーニング業界への就職を希望する人が少ない傾向にあります。
また、人件費を抑えるために人員の数を増やすことができないので、本来想定される効率的に業務を行える人数から人員を減らした状態で業務を行わないといけない事例が多くみられ、清掃員の負担が増加することにより業界に人材が定着しにくい土壌ができています。
ビルクリーニング業界では、このような状態が長年の間放置されたままになっていたにも関わらず、改善しようとする姿勢が見られなかったことが現状の業界全体の人手不足に繋がってしまったようです。
将来的に業界全体の人手不足を解消するためには、仕事を求め来日する外国人労働者の雇用の促進のみならず、上記のような業界の体質についての改善も視野に入れなければならないのではないでしょうか。
➁技能実習「ビルクリーニング」
上記で説明したように、ビルクリーニング業界は人手不足に陥っており、国内の労働者のみでは人員を賄うことができないことから、外国人労働者の募集・受け入れを進めています。
その活動の一環として挙げられるのが「技能実習」という制度であり、外国人技能実習生が、日本の企業や個人事業主等の実習実施者と雇用契約を行い自国において修得が困難と考えられている技能等の取得を目的とした制度です。
外国人技能実習生の受け入れ方式には、①企業単独型、②団体監理型の2つの方式があります。
1. 企業単独型:日本の企業等が海外の現地企業、提携先の企業や取引先企業の人員を受け入れることにより技能実習を実施する方式
2. 団体監理型:事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を入れることにより技能実習を実施する方式
また、技能実習の技能などの取得の習熟度の具合によって段階的に区分分けされており、具体的には以下のようになっています。
企業単独型 | 団体監理型 | |
技能実習1年目 | 第1号企業単独型技能実習(在留資格「技能実習第1号イ」) | 第1号団体監理型技能実習(在留資格「技能実習第1号ロ」) |
技能実習2・3年目 | 第2号企業単独型技能実習(在留資格「技能実習第2号イ」) | 第2号団体監理型技能実習(在留資格「技能実習第2号ロ」) |
技能実習4・5年目 | 第3号企業単独型技能実習(在留資格「技能実習第3号イ」) | 第3号団体監理型技能実習(在留資格「技能実習第3号ロ」) |
外国人技能実習生が第1号技能実習から第2号技能実習などの上位の技能実習に進んでいくためには、技能実習生は所定の技能評価試験に合格する必要があります。
また、すべての業種において上位の技能実習に移行できるわけではなく、移行が可能な職種・作業(移行対象職種・作業)は主務省令で定められているので詳しく知りたい人は厚生労働省が公表している以下の資料をご覧ください。
(https://www.mhlw.go.jp/content/000932507.pdf)
特定技能「ビルクリーニング」とは
ここまでの説明でビルクリーニング業界は人手不足を解消するために、技能実習制度の下外国人技能実習生の受け入れを進めといることは理解してもらえたと思います。
しかし、外国人労働者を受け入れるにしても無条件で受け入れることはできず、就業を希望する外国人には特定技能「ビルクリーニング」の資格を取得してもらう必要があります。
そこで、この段落においては特定技能「ビルクリーニング」の資格に関する内容について説明していきます。
①特定技能の資格を取得するには
特定技能の資格を取得するにはどのすればいいのか、具体的には以下のような水準を満たす必要があります。
1. 「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」に合格すること
2. 日本語能力判定テスト(仮称)」又は日本語能力試験(N4以上)に合格すること
上記の2つの水準を満たすことによって、日本語での意思疎通ができるうえ適切な方法を選択して清掃作業を遂行できる水準にあることが認められ、資格が取得できます。
➁特定技能における雇用形態・任せられる業務・報酬について
特定技能ビルクリーニングの雇用体系としては原則的に直接雇用に限られており、派遣雇用は許可されていないようです。
また、任せられる業務内容としてはビルやホテルなどの建物の玄関や廊下、階段やトイレ、エレベーターやエスカレーター、または駐車場や外壁の清掃が主な業務となっています。
さらに、特定技能ビルクリーニングの報酬についてですが、現状業界の平均年収が280万円前後と言われているようですが、近年の最低賃金上昇と人手不足から将来的に上記の数値よりも高くなる可能性も考えられます。
特定所属機関(受入れ企業)の注意点
特定技能の資格を取得した外国人労働者の受け入れをするにしても受け入れる側の企業はどのような点に注意すればいいのか、具体的な内容については以下において説明していきます。
①建築物環境衛生総合管理業の登録
建築物における清掃を行う事業を行う業者は、外国人労働者の受け入れを行う場合には、建築物環境衛生総合管理業の登録を行う必要があります。
建築物環境衛生総合管理業の登録のための要件としては、①物的要件、②人的要件、③その他の要件などの要件を満たさなければなりません。
① 物的要件
物的要件には以下のようなものが要求されます。
1 | 真空掃除機 |
2 | 床みがき機 |
3 | 残留塩素測定器 |
4 | 浮遊粉塵測定器 |
5 | 一酸化炭素測定器 |
6 | 二酸化炭素測定器 |
7 | 温度計(0.5度目盛) |
8 | 乾湿球湿度計 (0.5度目盛) |
9 | 風速計(0.2m毎秒以上の気流を測定することができる測定器) |
10 | 空気環境の測定に必要な道具(測定用スタンド等) |
② 人的要件
人的要件には以下のような人材がいることが要求されます。
①統括管理者 | 統括管理者講習会修了者 |
➁清掃作業監督者 | 清掃作業監督者の資格を取るためには、⓵ビルクリーニング技能検定に合格、②建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けるかの内1つを満たす必要がある |
③空気環境測定実施者 | 空気環境測定実施者の資格を取るためには、①空気環境測定実施者講習会修了者かつ講習会修了後6年以内であること、または、②過去に一度も空気環境測定実施者として登録のない建築物環境衛生管理技術者であることの内1つを満たす必要がある |
④空調給排水管理監督者 | 空調給排水管理監督者の資格を取るためには、①ビルクリーニング技能検定の合格者であるか、②建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けていることの内1つを満たす必要がある |
⑤従事者研修を修了していること | 業務に従事する人は全員受ける必要がある |
③ その他の要件
その他の要件には作業方法,機械器具等の維持管理の方法が基準に適合していることという記載があります。
作業方法、機械器具等の維持管理の方法は厚生労働省告示に示すすべての項目を満たす必要があるので注意が必要です。
詳しく知りたい人は以下の資料をご覧ください。
(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/147683.pdf)
➁ビルクリーニング分野特定技能協議会の加入
外国人労働者の受け入れを行う場合にはビルクリーニング分野特定技能協議会の加入 を行う必要があります。
ビルクリーニング分野特定技能協議会とは、特定技能外国人の受入れおよびそのために必要となる情報の共有などを行い、特定技能外国人の受入れを円滑に行うために設立された組織のことです。
当協会において特定技能外国人の受入れに関する情報が適切に共有されることにより、雇用上に関する問題が発生したときの対応や転職の支援などが行われます。
資格取得・試験について
ビルクリーニング業界への就職を希望する外国人労働者は、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験という、日本語能力試験と、スキル・知識を図るための技能試験を受験する必要があります。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験を受験するための条件としては17歳以上の外国人、国内試験の受験を希望する場合は、「中長期在留者」、「過去に本邦に中長期在留者として在留した経験を有する者」であれば受けることができます。
しかし、以下のような人は受けることができません。
- 退学・除籍処分を受けたことがある留学生
- 失踪した技能実習生
- 在留資格「特定活動(難民申請)」により在留している者
- 技能実習などを現在行っている者
①試験日程・開催場所
2023年度のビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の試験日程・開催場所は以下のようになっています。
試験日程 | 2023年4月11日(火)~5月19日(金) 指定日のみ受験 |
合否発表 | 2023年 5月31日(水)10:00 |
開催場所 | 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、徳島県、福岡県で実施。会場ごとに試験日が指定されていますが、申し込み人数により試験日程が変更される場合があると案内されています。 |
今後の試験日程については発表されていませんが、受験を希望する人は「公益社団法人全国ビルメンテナンス協会」のホームページを確認してください。
(https://www.j-bma.or.jp/qualification-training/zairyu)
➁サンプル試験問題集
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の対策として利用することができるサンプル試験問題集がありますので、試験を受ける前に一度試しておくことが合格するためには重要です。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、①判断試験、②作業試験の2つの試験内容から構成されており、これらの内容について対策する必要があります。
サンプル試験問題集については以下に上げていますので興味のある人は一度確認してみると良いのではないでしょうか。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験(国内試験)
実技試験問題
まとめ
ここまで、ビルクリーニングで外国人を雇用する際に必要な資格や準備、注意点には何があるのかなどについて説明してきましたがいかがでしたか。
上記で説明したようにビルクリーニング業界は慢性的な人手不足に陥っており、国内の労働者だけでは業界を維持することが難しく外国人労働者の速やかな受け入れを行うことが重要な問題の1つになっています。
この記事で紹介したビルクリーニングで外国人を雇用する際に必要な準備や注意点には何があるのかに関する情報を参考にして、外国人労働者の受け入れの検討の役に立てていただけると幸いです
長くなりましたが、ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。
特定技能人材の採用をお考えの皆様へ
今まで外国人材を雇用された経験のない企業様も多いのではないでしょうか。
・日本語でのコミュニケーションに問題はないか?
・どのような仕事を任せられるのか?
・どの国の人材が良いのか?
・雇用するにあたり何から始めればよいのか?
…など、様々不安や疑問があるかと思います。
外国人材採用をご検討の方、是非一度お問い合わせくださいませ。
この記事が気に入ったら
いいねをお願いします!
関連記事リンク
-
「登録支援機関」とは?特定技能制度における登録支援機関の役割・選び方、取得条件や注意 みなさんは「登録支援機関」という組織をご存知でしょうか。外国人労働者を雇っている方は、この組織名を耳にしたことがあるかもしれません。これから外国人労働者を雇いたいと考えている方は、この「登録支援機関」を上手に利用していくことが大切になります。今回は、この登録支援機関について、役割や業務、選び方などの詳細情報を紹介していきます。
-
特定技能「外食」|外国人を雇用するために必要な準備・ステップ 外食業における特定技能制度について解説します。
-
特定技能「宿泊」|外国人を雇用するために必要な準備・ステップ・注意点とは? 宿泊業界は、2020年を迎えても衰えを全く見せず、発展を続けています。観光庁の発表では、2018年の訪日外国人は3000万人を突破し、今後も五輪などを経て増加を続け、2030年には6000万人に昇ると試算されるほど。ますます、来日観光客の増加と、宿泊数の増加が考えられます。
コラム情報
-
【特定技能】バングラデシュ人を採用するステップ・注意点を解説。 インドとミャンマーに挟まれる南アジアの国、バングラデシュ。日本の4割ほどの国土に日本人口の1.3倍ほどの約1億7000万人が暮らしています。アジア最貧国と知られ、洪水など災害の多い地域では現在も貧困世帯が多い一方、主に衣料・縫製産業の著しい発展により近年のGDP年間成長率は7.1%(2022年度、バングラデシュ統計局)。平均年齢27.6歳と若く、厳しい環境で培われたハングリー精神に溢れるバングラデシュ人が、日本で活躍する人材として今注目を集めています。
-
特定技能在留外国人数【2024年6月末時点】 出入国在留管理庁は、2024年6月末での特定技能1号における在留外国人数は251,747人と発表しました。特定技能制度における5年間の受け入れ人数目標は34万5150人と定められています。国別・業種別の受け入れ人数をまとめました。
-
特定技能「工業製品製造業」|外国人を雇用するために必要な準備・ステップ・注意点とは? 2019年4月に入管法が改正され、新しい在留区分である「特定技能ビザ」が新設されました。全14業種にて特定技能人材を受け入れると発表されていますが、今回は工業製品製造業の特定技能制度について紹介いたします。
-
【特定技能】スリランカ人を採用するステップ・注意点を解説。 インド洋の島国、スリランカ。北海道の約8割に相当する大きさで、自然が豊かな様子から「インド洋の真珠」とも呼ばれています。イギリスの植民地時代にはセイロンという国名だったことからも伺えるように紅茶の生産が盛んで、他の主要産業は農業と繊維業。仏教や主食が米であることなど、日本との共通点も多く見られます。そんなスリランカから特定技能労働者を受け入れるポイントを説明していきます。
-
【特定技能】ネパール人を採用するステップ・注意点を解説。 インドと中国のチベット自治区の間に位置する内陸国、ネパール。国土の約8割が丘陵や山岳地帯で、世界最高峰の山エベレストを含むヒマラヤ山脈があることでも知られています。意外に感じるかもしれませんが、ネパールは日本と同じアジアの国の一つ。世界で唯一、四角形ではない独特な形の国旗は、日本国内に多数あるネパール料理店でも目にしたことがあるかもしれません。遠いようで、実は日本人にもなじみのあるネパールから特定技能労働者を受け入れるには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
セミナー情報
-
【オンラインセミナー】 外国人活躍支援サミット~次世代日本人とつくる日本の未来~ 外国人雇用協議会 外国人雇用協議会の創始者・初代会長の故 堺屋太一氏は生前、日本社会で活躍する外国籍の仲間を含む日本人を『次世代日本人』と定義しました。異文化を尊重し合いながら外国籍の方々を仲間としてともに育む日本の社会づくりを目指し、その旗振り役になることを目的に弊協議会は設立されました。 そして弊協議会は、その『次世代日本人』とつくる日本の未来に向けて、①政策提言、②日本社会への情報発信、③外国人への教育推進、を展開しています。 本サミット第1日(10月6日)は、約2,000人以上の外国人雇用やサポートに関心のある方に受講いただき、各分野のスペシャリストが登壇する基調講演・パネルディスカッションから学んでいただく機会を提供いたします。
-
造船・舶用工業分野に係る特定技能外国人受入れに向けた説明会のご案内 国土交通省及び一般財団法人日本海事協会 からの情報を掲載します。 3月に開催される特定技能制度「造船・舶用工業」に関する説明会のご案内です。
-
【一般社団法人建設技能人材機構(JAC) 】建設特定技能外国人制度の説明会 一般社団法人建設技能人材機構(JAC)からの情報を掲載します。 2月~3月に開催される特定技能制度「建設業」に関する説明会のご案内です。
-
2024/11/15
【特定技能】バングラデシュ人を採用するステップ・注意点を解説。
-
2024/10/04
特定技能在留外国人数【2024年6月末時点】
-
2024/10/04
特定技能「工業製品製造業」|外国人を雇用するために必要な準備・ステップ・注意点とは?
-
2024/07/31
【特定技能】スリランカ人を採用するステップ・注意点を解説。
-
2024/07/31
【特定技能】ネパール人を採用するステップ・注意点を解説。
-
2024/04/11
特定技能在留外国人数【2023年12月末時点】
-
2024/01/17
特定技能1号在留外国人数【2023年6月末時点】
-
2023/06/09
特定技能1号在留外国人数【2022年12月末時点】