特定技能「木材産業」|外国人を雇用するために必要な準備・ステップ

特定技能「木材産業」とは
特定技能とは、人材が不足しているとされる特定産業分野において、一定の専門性や技能を持っている外国人材を受け入れる在留資格制度です。
全16分野において外国人材の就労が認められていますが、そのなかの1つに「木材産業」があります。制度の新分野として2024年3月に新しく追加されました。
新しく追加されたことにより、原木の加工や製材、板材の組み立てやプレス加工などの業務に従事できる外国人材を受け入れることが可能となりました。これにより、木材産業業界の人手不足の解消が期待されています。
受け入れ見込み人数
政府は、16分野ごとの今後5年間の受け入れ見込み人数(令和6年4月から)を定めており、木材産業の分野は5,000人が見込まれています。
木材産業業界の従事者数は年々減少しています。林野庁が発表した「林業・木材産業の働き方をめぐる現状の整理」によると、1985年には330,676人の従事者数でしたが、2015年には117,960人にまで減少しました。日本は労働人口の減少が著しく、もはや国内だけの人材では対応しきれなくなっているのです。
そんななかで、一定の専門性を備えている外国人材を受け入れられることは、業界の問題解決・さらなる発展のきっかけとなるでしょう。
受け入れられた外国人材は、主に以下のような業務に従事させることが可能です。
〈 従事する主な業務 〉
製材/単板(ベニヤ)製造/木材チップ製造/合板製造/集成材製造/プレカット加工/銘木製造/床板製造
〈 想定される関連業務 〉
・原材料(原木・資材)の調達・受入れ作業
参照:特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)
・製品の検査
・製品の出荷作業(運搬・梱包・積込み)
・作業場所の整理整頓や清掃
木材産業業界の現状
木材産業業界の人手不足は非常に深刻で、とくに製材業や合板製造業などの現場では労働力不足が顕著です。その背景には複数の要因が絡んでいます。
ここからは業界の現状や人手不足の原因について解説します。
従事者の高齢化が進んでいる
先ほども触れたように、木材産業業界の従事者数は年々減少しています。しかし、ただ人手が不足しているだけではなく、従事者の高齢化も大きな問題です。業界内の従事者は定年を迎えようとしている現場の熟練労働者も多くなっています。
とくに地方では、人口減少や都市部への人口流出が顕著であり、若年層の労働者を確保するのが困難です。結果として、業務の多くが高齢の熟練労働者に依存しており、生産性の低下や技能継承の遅れにつながっています。
若年層が少なく技術の継承が進まない
木材産業業界は若年層の定着・参入が少なく、次世代の業界を担う人材が確保できていません。原木の加工や製材、板材の組み立てやプレス加工など肉体的な負担が大きい業務が多く、「自分には難しそう」と敬遠する若者が増えているようです。
また、肉体的な負担が大きい業務が多いにも関わらず、収入は他の産業に比べて少ない傾向にあります。以下は、全産業と木材産業の年齢別の給与を示したデータです。
労働条件の厳しさや高くはない賃金によって、若い世代にとっては魅力的な職場と認識されにくくなっているのです。
国際競争により賃金の水準が低くなっている
木材産業では、国内外の競争が激化しており、人手不足がその競争力に影響を及ぼしています。とくに、安価な輸入材の増加により、国内の木材産業は市場での競争力を失い、業界の収益性が低下しています。その結果、賃金水準が他産業に比べて低くなり、労働者の確保が難しくなっているのです。
このような懸念される問題が多いなかで、「外国人材の雇用」による人材確保を目指すための取り組みが、特定技能制度の活用です。制度を活用することで、日本国内に限定せず、幅広い人材の採用・雇用を進めていくことが可能となります。
特定技能「木材産業」の取得要件
特定技能「木材産業」を取得するには、一定業務をこなせる水準の外国人材であることを証明しなければいけません。また、受け入れる企業側も要件を満たす必要があります。
ここからは取得の要件について解説します。
木材産業技能測定試験と日本語試験への合格が必要
特定技能「木材産業」を取得するには、「測定試験」と「日本語試験」の両方への合格が必要です。
測定試験は、一定の専門性・技能を用いて即戦力として活動するために、必要な知識や経験を備えていることを確認するための試験です。学科試験と実技試験の2部構成でおこなわれます。2025年度は、東京都・福岡県・愛知県・北海道・広島県・岩手県・インドネシアにて実施されます。
日本語試験は、「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験」のどちらかに合格する必要があります。日本語能力試験の場合はN1からN5までありますが、「N4」(基本的な日本語を理解することができるレベル)以上の合格が必要です。
特定所属機関(受入れ企業)の要件
特定技能「木材産業」の人材を受け入れる機関は、以下の要件を満たす必要があります。
参照:木材産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針|法務省
- 「木材産業特定技能協議会の構成員になること。
- 協議会において協議が調った措置を講じること。
- 協議会に対し、必要な協力をおこなうこと。
- 農林水産省またはその委託を受けた者が行う調査等に対し、必要な協力をおこなうこと。
- 登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合、協議会・農林水産省に対し必要な協力を実施する機関に委託すること。
特定技能制度の活用を検討している企業は、まずこれらの条件を整備し、計画的な受け入れ体制を構築することが重要です。もし要件を満たさずに採用・雇用をおこなうと、企業が罰則を受けることとなってしまいますので、注意が必要です。
特定所属機関(受入れ企業)の注意点
特定技能人材を雇い入れる際には、おさえておくべき注意点がいくつかあります。ここからは、特定所属機関(受入れ企業)の注意点を解説します。
木材産業特定技能協議会への加入が必須
企業が特定技能人材を受け入れるには、さまざまな準備・手続きが必要です。その1つとして「協議会への加入」が義務付けられています。
木材産業分野の特定技能協議会は農林水産省が設立しており、外国人材の受入れにともなう多様な課題を解決したり、企業と労働者双方が安心して働ける環境を整えたりするために運営されています。加入後は、協議会の取り組みへの協力が求められます。
協議会への加入は、ビザ申請の前までにおこなう必要があります。ビザ申請の際には、協議会の加入証明書を原則提出しなければいけません。そのため、加入申請が遅れるとビザ申請ができません。人材の採用を決めたら、できるだけ早めの申請をおこなうようにしましょう。
農林水産省がおこなう調査に協力する
協議会への協力とは別に、農林水産省や委託を受けた機関が実施する調査・指導に対して、必要な協力をおこなうことも定められています。外国人材の雇用に関する指導や報告の要求、現地調査など、必要な協力をおこなうようにしましょう。
定められた範囲内で業務をおこなわせる
特定技能人材には、定められた範囲内で業務を実施させましょう。前述していますが、従事できるのは主に以下のような業務です。
〈 従事する主な業務 〉
製材/単板(ベニヤ)製造/木材チップ製造/合板製造/集成材製造/プレカット加工/銘木製造/床板製造
〈 想定される関連業務 〉
・原材料(原木・資材)の調達・受入れ作業
参照:特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)
・製品の検査
・製品の出荷作業(運搬・梱包・積込み)
・作業場所の整理整頓や清掃
義務的支援を実施する
日本に初めて到着する外国人材は、日本の文化や暮らし方に慣れていないことがほとんどです。そのため、労働面でも生活面でも必要な支援をおこなう必要があります。
これは「義務的支援」として、企業が必ず実施しなければならない支援です。住居の確保や各種手続きのサポート、日本語学習の機会の提供など、トラブルなく日本で生活ができるように支援をおこなってください。
自社でおこなうのが大変な場合は、「登録支援機関」に委託するのがおすすめです。登録支援機関は、外国人材の雇用に必要な手続きや支援業務を代行する専門機関となっています。委託することで手続きや支援を代行しておこなってくれるため、自社の負担を大幅に減少させることが可能です。
試験の受講方法
測定試験は、「一般社団法人 全国木材組合連合会」が試験実施機関としておこなっています。受験するには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 満17歳以上の者(インドネシア国籍を有する者にあっては、満18歳以上)
- 日本国内において実施する試験にあっては、在留資格を有する者であること(退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府又は地域の権限ある機関の発行した旅券を所持している者に限る。)
試験の申請方法は、全国木材組合連合会のホームページから「受験申請フォーム」に必要事項を入力して申請をおこないます。申請後、全国木材組合連合会からの案内に従い、指定された銀行口座に受験料を振り込みます。受験料は4,400円(税込)、合格後の合格証明書交付手数料は15,000円(税込)です。
受験料の入金が確認できた時点で受験申請が成立され、試験実施日の約2週間前を目途に受験票がメールで送付されます。
試験はペーパーテスト方式で実施され、合計得点の65%以上で合格です。試験の出題範囲は以下のとおりです。
大項目 | 小項目 | |
学科試験(一般)配 点:56点 | 森林・林業・木材産業の概要 | 森林/林業/木材の用途 |
木材の性質 | 樹木の種類/含水率/丸太/年輪/木目 | |
作業安全 | 労働災害/安全点検/保護具 | |
学科試験(専門)配 点:18点 | 各製品の製造作業 | 製材/集成材/合板・LVL/チップ/フローリング/ツキ板/プレカット |
使われる機械・装置 | ||
各製品の利用 | ||
実技試験配 点:26点 | 作業の手順/安全衛生/計算問題 |
引用:試験の概要
試験のサンプルや申請フォーム、試験に関する詳しい情報などは「一般社団法人 全国木材組合連合会」のホームページに掲載されています。受験を希望する方や、試験の申請方法について詳しく知りたい方は、ホームページを確認してください。
特定技能人材の採用をお考えの皆様へ
今まで外国人材を雇用された経験のない企業様も多いのではないでしょうか。
・日本語でのコミュニケーションに問題はないか?
・どのような仕事を任せられるのか?
・どの国の人材が良いのか?
・雇用するにあたり何から始めればよいのか?
…など、様々不安や疑問があるかと思います。
外国人材採用をご検討の方、是非一度お問い合わせくださいませ。


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